件数統計 読込エラー===select * from homonkensu where kubun='No1'TOTOわいふぁい TOTOワイファイ 俳句 季語

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  対象10297件  [1/11]     俳句メニュー

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作品番号 作者  俳句説明
 1 子規  草の花つれなきものに思ひけり 病床六尺
 2 子規  断腸花つれなき文の返事かな 病床六尺
 3 子規  翡翠の飛んでしまひし柳かな 病床六尺
 4 子規  翡翠の去って柳の夕日かな 病床六尺
 5 子規  翡翠の足場を選ぶ柳かな 病床六尺
 6 子規  柳伐って翡翠終に来ずなりぬ 病床六尺  終に:ついに
 7 子規  翡翠も鷺も来て居る柳かな 病床六尺
 8 子規  翡翠の来ぬ日柳の嵐かな 病床六尺
 9 子規  翡翠や池をめぐりて皆柳 病床六尺
 10 子規  翡翠の来る柳を愛すかな 病床六尺
 11 子規  翡翠をかくす柳の茂りかな 病床六尺
 12 子規  翡翠の魚を覗ふ柳かな 病床六尺  覗ふ:うかがう
 13 子規  鹿を逐ふ夏野の夢路草茂る 病床六尺  逐ふ:おう
 14 子規  涼しさの皆いでたちや袴能 病床六尺
 15 蕪村  屋根低き宿うれしさよ冬籠 
 16 子規  五月雨や善き硯石借り得たり 病床六尺
 17 子規  芍薬は散りて硯の埃かな 病床六尺
 18 子規  墨汁のかわく芭蕉の巻葉かな 病床六尺
 19 子規  殺生石の空や遥かに帰る雁 病床六尺
 20 子規  化物の名所通るや春の雨 病床六尺
 21 子規  玉虫の穴を出でたる光かな 病床六尺
 22 子規  芍薬を画く牡丹に似も似ずも 病床六尺
 23 子規  芍薬の衰へて在り枕許 病床六尺
 24 子規  時鳥辞世の一句無かりしや 病床六尺
 25 子規  君を送る狗のころ柳散る頃に 狗:えの
 26 子規  陽炎や日本の土にかりもがり 病床六尺  殯【かりもがり】とは、貴人の遺体を棺に納め仮に安置して祀ること。通夜のこと
 27 子規  春の夜や無紋あやしき小提灯 
 28 子規  春の夜や料理屋を出る小提灯 病床六尺
 29 子規  うたゝ寝に春の夜浅し牡丹亭 病床六尺
 30 子規  鶯も老いて根岸の祭かな 病床六尺
 31 子規  引き出だす幣に牡丹の飾り花車 花車:だし 病床六尺
 32 子規  氏祭これより根岸蚊の多き 病床六尺
 33 子規  不消化な料理を夏の祭かな 病床六尺
 34 子規  歯が抜けて筍堅く烏賊こはし 病床六尺
 35 子規  修復成る神杉若葉藤の花 病床六尺
 36 子規  筍に木の芽をあへて祝いかな 病床六尺
 37 子規  西行庵花も桜もなかりけり 病床六尺
 38 子規  南朝の恨を残す桜かな 病床六尺
 39 子規  案内者も吾等も濡れて花の雨 病床六尺
 40 子規  案内者の楠語る花見かな 病床六尺
 41 子規  指すや花の木の間の如意輪寺 病床六尺
 42 子規  花の山祇王権現鎮まりぬ 病床六尺
 43 子規  花見えて足踏み鳴らす上り口 病床六尺
 44 子規  吉野山第一本の桜かな 病床六尺
 45 子規  六田越えて花にいそぐや一の坂 病床六尺
 46 蕪村  老いが恋忘れんとすればしぐれかな 川端康成「山の音」より
 47 夏目漱石  枯残るは尾花なるべし一つ家 
 48 夏目漱石  見て行くやつばらつばらに寒の梅 
 49 夏目漱石  柿の葉や一つ一つに月の影 
 50 子規  わづらふと聞けばあはれや角力取 
 51 夏目漱石  連翹の奥や碁を打つ石の音 連翹:れんぎょう モクセイ科の落葉小低木
 52 夏目漱石  草刈の籃の中より野菊かな 籃:かご
 53 夏目漱石  青葉がちに見ゆる小村の幟かな 
 54 夏目漱石  欠伸して鳴る頬骨や秋の風 
 55 夏目漱石  朝貌や惚れた女も二三日 
 56 夏目漱石  かたまるや散るや蛍の川の上 
 57 夏目漱石  思ひ切って更け行く春の独りかな 
 58 夏目漱石  うた折々月下の春ををちこちす 
 59 夏目漱石  海棠の精が出てくる月夜かな 
 60 夏目漱石  春や今宵歌つかまつる御姿 
 61 夏目漱石  春の夜の雲に濡らす洗ひ髪 
 62 夏目漱石  春の星を落して夜半のかざしかな 
 63 尾崎放哉  霜とけ鳥光る 
 64 尾崎放哉  昼の鶏なく漁師の家ばかり 
 65 尾崎放哉  となりにも雨の葱畑 
 66 尾崎放哉  風吹く家のまはり花無し 
 67 尾崎放哉  旧暦の節句の鯉がをどつて居る 
 68 尾崎放哉  とかげの美しい色がある廃庭 
 69 尾崎放哉  鐘ついて去る鐘の余韻の中 
 70 尾崎放哉  なぎさふりかへる我が足跡も無く 
 71 尾崎放哉  流るる風に押され行き海に出る 
 72 尾崎放哉  落葉掃き居る人の後ろの往来を知らず 
 73 尾崎放哉  休め田に星うつる夜の暖かさ 
 74 尾崎放哉  海は黒く眠りをり宿につきたり 
 75 尾崎放哉  護岸荒るる波に乏しくなりし花 護岸あるる波に乏しくなりし花
 76 尾崎放哉  きれ凧の糸かかりけり梅の枝 
 77 尾崎放哉  水打つて静かな家や夏やなぎ 
 78 尾崎放哉  行春や母が遺愛の筑紫琴 
 79 尾崎放哉  病いへずうつうつとして春くるる 
 80 尾崎放哉  寒菊や鶏を呼ぶ畑のすみ 
 81 尾崎放哉  露多き萩の小家や町はづれ 
 82 尾崎放哉  いれものがない両手でうける 
 83 尾崎放哉  枯枝ぽきぽき折るによし 
 84 尾崎放哉  手袋片ッポだけ拾った 
 85 尾崎放哉  朝の舟岸により来る 
 86 尾崎放哉  小さい島に住み島の雪 
 87 尾崎放哉  赤ん坊ヒト晩で死んでしまった 
 88 尾崎放哉  昔は海であったと榾をくべる 榾:ほた
 89 尾崎放哉  松かさそっくり火になった 
 90 尾崎放哉  庵の障子あけて小ざかな買ってる 
 91 尾崎放哉  ヒドイ風だドコ迄も青空 
 92 尾崎放哉  死にもしないで風邪をひいてゐる 
 93 尾崎放哉  火の気のない火鉢を寝床から見て居る 
 94 尾崎放哉  なにがたのしみで生きてゐるのかと問はれて居る 
 95 尾崎放哉  島から出たくもないと云って年とってゐる 
 96 尾崎放哉  追っかけて追ひついた風の中 
 97 尾崎放哉  山に登れば淋しい村がみんな見える 
 98 尾崎放哉  之でもう外に動かないでも死なれる 
 99 尾崎放哉  松かさも火にして豆が煮えた 
 100 尾崎放哉  とんぼが淋しい机にとまりに来てくれた 
 101 尾崎放哉  蛍光らない堅くなってゐる 
 102 尾崎放哉  眼の前魚がとんてせ見せる島の夕陽にきて居る 
 103 尾崎放哉  海がよく凪いで居る村の呉服屋 
 104 尾崎放哉  海がまっ青な昼の床屋にはいる 
 105 尾崎放哉  小さい橋に来て荒れる海が見える 
 106 尾崎放哉  高波打ちへす砂浜に一人を投げ出す 
 107 尾崎放哉  朝の白波高し漁師家に居る 
 108 尾崎放哉  砂山赤い旗たてて海へみせる 
 109 尾崎放哉  翌からは禁酒の酒がこぼれる 翌:あす
 110 種田山頭火  枯草へながう影ひいてふるさとの 
 111 種田山頭火  かすんでかさなって山がふるさと 
 112 種田山頭火  はるかに夕立雲がふるさとの空 
 113 種田山頭火  長い橋それをわたればふるさの街で 
 114 種田山頭火  こゝろからふるさとの山となる青葉 
 115 種田山頭火  暗れて雪ふる里に入る 
 116 種田山頭火  またふるさとにかへりそばのはな 
 117 種田山頭火  蒲団ふうわりふる郷の夢 
 118 種田山頭火  めずらしく棕櫚が咲いてゐて少年の夢 
 119 種田山頭火  人のなつかしくかれくさみちをゆく 
 120 種田山頭火  蕗つめば蕗のにほひのなつかしく 
 121 種田山頭火  蓬むしれば昔なつかし 
 122 種田山頭火  月がまねくふるさとはおまつり 防府天満宮神幸祭
 123 種田山頭火  あれがふるさとの山なみの雪ひかる 
 124 種田山頭火  蕗のうまさもふるさとの春ふかうなり 
 125 種田山頭火  ぼけが咲いてふるさとのかたすみに 
 126 種田山頭火  生きてはゐられない雲の流れゆく 
 127 種田山頭火  明日のあてはない松虫鈴虫 
 128 種田山頭火  夜の道白い一すじをたどる 
 129 種田山頭火  夜風その奥から迫りくるもの 
 130 種田山頭火  けふも濡れて知らない道をゆく 
 131 種田山頭火  降るまゝ濡れるまゝで歩く 
 132 種田山頭火  背中の夕日が物を思はせる 
 133 種田山頭火  燕来ては並びもあへず風に散るかな 
 134 種田山頭火  桐一葉一葉一葉の空仰ぎけり 
 135 種田山頭火  木漏れ日のつめたきにたまる落花あり 
 136 種田山頭火  ながれがこゝであつまる音の山ざくら 
 137 種田山頭火  太鼓たたいてさくらちるばかり 
 138 種田山頭火  水にさくらの散るところがけふ 
 139 種田山頭火  さくらすっかり葉桜となりて月夜 
 140 種田山頭火  お山のさくらまんかい 
 141 種田山頭火  水にうつりて散ってゐるのは山ざくら 
 142 種田山頭火  なみおとのさくらほろほろ 
 143 種田山頭火  とほく富士をおいて桜まんかい 
 144 種田山頭火  暮れるとすこし肌寒いさくらほろほろ 
 145 種田山頭火  さくらいつしかいろづいたかげが水に 
 146 種田山頭火  桜が咲いて旅人である 
 147 種田山頭火  秋は月が虫が澄むわたくしも澄む 
 148 種田山頭火  濁れる水の流れつつ澄む 
 149 種田山頭火  大空を仰げば月の澄みわたるなり 
 150 種田山頭火  のぼるほどに水は澄みてはげしく 
 151 種田山頭火  月の澄みやうは熟柿落ちようとして 
 152 種田山頭火  茶の花や水澄んできた 
 153 種田山頭火  赤子つぶらな眼を見張り澄んで青い空 
 154 種田山頭火  冬夜あかるし人形笑ふ 
 155 種田山頭火  水のあかるくながれてくれば河鹿なく 
 156 種田山頭火  青く明るく信濃の国はなつかしきかな 
 157 種田山頭火  まちきれない雑草へあかるい雨 
 158 種田山頭火  月へ汲みあげる水のあかるさ 
 159 種田山頭火  青田も人も濡れてゐる雨のあかるく 
 160 種田山頭火  麦に穂が出るふるさとへいそぐ 
 161 種田山頭火  ふっとふるさとのことが山椒の芽 
 162 種田山頭火  草餅のふるさとの香をいたゞく 
 163 種田山頭火  ラジオでつながって故郷の唄 
 164 種田山頭火  明るく暮らしてゐる家の冬木 
 165 種田山頭火  見るとなく見てをれば明るい雨 
 166 種田山頭火  あかるく竹がそよいでゐる 
 167 種田山頭火  百舌鳥ないてパッと明るうなる 
 168 種田山頭火  咲かない馬酔木の芽のうつくしさ 
 169 種田山頭火  ただに燃えて火のうつくしく 
 170 種田山頭火  夕焼雲のうつくしければ人の恋しき 
 171 種田山頭火  よう燃えてよう炊けてうつくしい空 
 172 種田山頭火  今日のをはりのうつくしや落日 
 173 種田山頭火  ゆふ焼のうつくしさは老をなげくでもなく 
 174 種田山頭火  霜晴れの太陽うつくしく昇る 
 175 種田山頭火  ゆう焼のうつくしくおもふことなく 
 176 種田山頭火  この木もあの木もうつくしい若葉 
 177 種田山頭火  晴れてうつくしい草の葉の霜 
 178 種田山頭火  あるけば冬草のうつくしいみち 
 179 種田山頭火  わらやうつくしい氷柱のひかる 
 180 種田山頭火  蜜柑うつくしいいろへしぐれする 
 181 種田山頭火  朝焼うつくしいとかげの木のぼり 
 182 種田山頭火  ゆふ雲のうつくしさはかなかなないて 
 183 種田山頭火  寒うなって葉ぼたんうつくしい 
 184 種田山頭火  とりわけてうつくしい葉ぼたんの日ざし 
 185 種田山頭火  名残ダリヤ枯れんとして美しい 
 186 種田山頭火  水音の暮れてゆく山さくらちる 
 187 種田山頭火  水音の山ざくら散るばかり 
 188 種田山頭火  若葉のひかりに触れつゝ行く 
 189 種田山頭火  いつも足らない身すぎ世すぎの風ひかる 
 190 種田山頭火  大霜の朝のひかりひろがる 
 191 種田山頭火  日ざかり萱の穂のひかれば 
 192 種田山頭火  りんごのひかりのおだやかなふたつ 
 193 種田山頭火  あるきまはれば木の芽のひかり 
 194 種田山頭火  夕あかりの枇杷の実のうれて鈴なり 
 195 種田山頭火  星あかりをあふれくる水をすくふ 
 196 種田山頭火  ほのかに梅雨あかりして竹の子の肌 
 197 種田山頭火  こしかたゆくすゑ雪あかりする 
 198 種田山頭火  暮れてひっそり雪あかり月あかり 
 199 種田山頭火  さらさらささのゆきあかりして 
 200 種田山頭火  秋風こんやも星空のました 
 201 種田山頭火  月かげのまんなかをもどる 
 202 種田山頭火  月の落ちる方へあるく 
 203 種田山頭火  逢うて別れる月が出た 
 204 種田山頭火  ひとり見てゐる月が落ちかかる 
 205 種田山頭火  日ざかり赤い花のいよいよ赤く 
 206 種田山頭火  日ざかり黄ろい蝶 
 207 種田山頭火  今日がはじまる日ざしを入れて 
 208 種田山頭火  雪も晴れ伸びた芽にぬくいひざし 
 209 種田山頭火  大楠の枝から枝へ青あらし 
 210 種田山頭火  よみがへる稲代が青い青い雨 
 211 種田山頭火  すっかり青田になって水音ひかる 
 212 種田山頭火  青麦ひろびろひらけるこゝろ 
 213 種田山頭火  砂山青白く誰もゐない 
 214 種田山頭火  月夜の青葉の散るや一枚 
 215 種田山頭火  青葉まぶしく掌をひらく 
 216 種田山頭火  さらさら青葉の明けてゆく風 
 217 種田山頭火  青葉の雨のしんかんと鐘鳴る 
 218 種田山頭火  草の青さに青い蛙がひっそり 
 219 種田山頭火  草の青さよはだしでもどる 
 220 種田山頭火  草青く寝ころぶによし 
 221 種田山頭火  ふっと覚めて青い青い空 
 222 種田山頭火  藪をとほして青空が秋 
 223 種田山頭火  藪を伸びあがり若竹の青空 
 224 種田山頭火  青空したしくしんかんとして 
 225 種田山頭火  登りつめて空の青さ 
 226 種田山頭火  伸びぬいて筍の青空 
 227 種田山頭火  水田青空に植ゑつけてゆく 
 228 種田山頭火  たちまち暗くたちまち明るく青い山 
 229 種田山頭火  ぐっすり寝て覚めて青い山 
 230 種田山頭火  こんな草の実どこの草の実 
 231 種田山頭火  草刈るや草の実だらけ 
 232 種田山頭火  ほっと入日のさすところ草の実 
 233 種田山頭火  すわれば草の実あるけば草の実 
 234 種田山頭火  木の実草の実みんなで食べる 
 235 種田山頭火  寝ころべば枯草の春匂ふ 
 236 種田山頭火  枯草しいて月をまうへに 
 237 種田山頭火  枯草を焼く音の晴れてくる空 
 238 種田山頭火  なんぼでもあるく枯野枯草 
 239 種田山頭火  明日を約して枯草の中 
 240 種田山頭火  大地あたゝかに草枯れてゐる 
 241 種田山頭火  やりきれない枯草だ 
 242 種田山頭火  身のまはりまいにち好きな草の咲く 
 243 種田山頭火  しんみりする日の草のかげ 
 244 種田山頭火  雑草も声ありてしぐれ 
 245 種田山頭火  ひとりがよろしい雑草の花 
 246 種田山頭火  出てみれば雑草の雨 
 247 種田山頭火  やっぱりひとりがよろしい雑草 
 248 種田山頭火  雑草はうつくしい淡雪 
 249 種田山頭火  酔へばあさましく酔はねばさびしく 
 250 種田山頭火  酔ひのさめゆく蕎麦の花白し 
 251 種田山頭火  酔うたが雨の音 
 252 種田山頭火  酔ひしれた眼にもてふてふ 
 253 種田山頭火  また逢うてまた酔うてゐる 
 254 種田山頭火  ふる郷ちかく酔うてゐる 
 255 種田山頭火  一杯二杯三杯よいかな風鈴 
 256 種田山頭火  ひとり雪みる酒のこぼれる 
 257 種田山頭火  秋寒く酔へない酒を飲んでゐる 
 258 種田山頭火  さくら真っ盛りのひとりで寝てゐる 
 259 種田山頭火  ひとりしづかな火が燃えてゐる 
 260 種田山頭火  さむざむ降る雨のひとりに籠る 
 261 種田山頭火  旅も一人の春風に吹きまくられ 
 262 種田山頭火  遠くなり近くなる水音の一人 
 263 種田山頭火  ひとり住めば木の葉ちるばかり 
 264 種田山頭火  一日花がこぼれて一人 
 265 種田山頭火  虫が鳴く一人になりきった 
 266 種田山頭火  ひとりのあつい茶をすゝる 
 267 種田山頭火  ひとりきてきつゝき 
 268 種田山頭火  ひとり煮てひとり食べるお雑煮 
 269 種田山頭火  お天気がよすぎる独りぽっち 
 270 種田山頭火  こゝに枯れたるこの木の冬となる 
 271 種田山頭火  鶯啼いて私も一人 
 272 種田山頭火  うらは藪で筍にょきにょき 
 273 種田山頭火  そこらあるけば草の実だらけ 
 274 種田山頭火  其中何人かで酔っぱらふ 
 275 種田山頭火  柿がうれると庵のまはりもにぎやかに 
 276 種田山頭火  庵もすっかり秋のけしきの韮の花 
 277 種田山頭火  蓼の花もう一年たったぞな 
 278 種田山頭火  庵にも赤い花が咲いてゐる日ざかり 
 279 種田山頭火  雑草にうづもれてひとつやのひとり 
 280 種田山頭火  椿が咲いたり落ちたり道は庵まで 
 281 種田山頭火  冴えかえる水音のぼれば我が家 
 282 種田山頭火  ふけて山かげの、あれはうちの灯 
 283 種田山頭火  茶の木も庵らしくする花ざかり 
 284 種田山頭火  わが庵の更けては落葉の音するだけ 
 285 種田山頭火  わが庵は月夜の柿のたわわなる 
 286 種田山頭火  月夜のわが庵をまはってあるく 
 287 種田山頭火  短日暮れかかる笈のおもさよ 
 288 種田山頭火  枯木は足袋をかはかしてゐる 
 289 種田山頭火  けふはこゝまでの草履ぬぐ 
 290 種田山頭火  草履かろく芋の葉の露 
 291 種田山頭火  朝月まうへに草履はかろく 
 292 種田山頭火  暮れて松風の宿に草履ぬぐ 
 293 種田山頭火  玄海をまへに草履はきかへる 
 294 種田山頭火  鉢の子の米の白さよ 
 295 種田山頭火  どこまでついてくる鉄鉢の蠅 
 296 種田山頭火  鉄鉢へ木の葉 
 297 種田山頭火  鉄鉢の暑さをいたゞく 
 298 種田山頭火  鉄鉢たたいて年をおくる 
 299 種田山頭火  草も笠もしぐれてゆく 
 300 種田山頭火  若葉のしづくで笠のしづくで 
 301 種田山頭火  笠の蝗の病んでゐる 蝗:いなご
 302 種田山頭火  法衣ぬげば木の実ころころ 
 303 種田山頭火  春が来た旅の法衣を洗ふ 
 304 種田山頭火  法衣の草の実払ひきれない 
 305 種田山頭火  乞食となって花ざかり 
 306 種田山頭火  香春をまともに乞ひ歩く 
 307 種田山頭火  誰にも逢はない道がでこぼこ 
 308 種田山頭火  あの道をゆかう秋の山 
 309 種田山頭火  また一人となり秋ふかむみち 
 310 種田山頭火  別れて月の道まっすぐ 
 311 種田山頭火  そっけなく別れてゆく草の道 
 312 種田山頭火  けふの道のたんぽぽ咲いた 
 313 種田山頭火  でこぼこの道を来てさびしうなりぬ 
 314 種田山頭火  ゆふ闇たへがたうして蕎麦の花 
 315 種田山頭火  ゆふ焼けのうつくしくおもふことなく 
 316 種田山頭火  何やら鳴いて今日が暮れる 
 317 種田山頭火  夕焼うつくしい旅路もをはり 
 318 種田山頭火  よねんなく砂掘る子あり夕焼けぬ 
 319 種田山頭火  炎天、はてもなくさまよふ 
 320 種田山頭火  炎天の萱の穂のちるばかり 
 321 種田山頭火  仰いで雲がない空のわたくし 
 322 種田山頭火  山の高さのわきあがる雲で 
 323 種田山頭火  木の葉ひかる雲が秋になりきった 
 324 種田山頭火  酔ひきれない雲の峰くづれてしまへ 
 325 種田山頭火  雪ふる逢へばわかれの雪ふる 
 326 種田山頭火  雪がふる人を見送る雪がふる 
 327 種田山頭火  雪ふるだまってゐる 
 328 種田山頭火  雪ふる歩けば雪ふる 
 329 種田山頭火  ひとり雪見る酒のこぼれる 
 330 種田山頭火  雪のあしあとのあとをふんでゆく 
 331 種田山頭火  雪のまぶしくひとりあるけば 
 332 種田山頭火  寝ざめしんしん雪ふりしきる 
 333 種田山頭火  雪、雪、雪の一人 
 334 種田山頭火  しぐるる夜のしんみり考へること 
 335 芭蕉  浪の間や小貝にまじる萩の塵 
 336 芭蕉  寂しさや須磨にかちたる浜の秋 
 337 芭蕉  名月や北国日和定なき 
 338 芭蕉  物書て扇引さく余波哉 余波:なごり
 339 芭蕉  庭掃て出ばや寺に散柳 
 340 芭蕉  今日よりや書付消さん笠の露 
 341 芭蕉  あやめ艸足に結ん草履の緒 艸:くさ 結ん:むすばん
 342 芭蕉  しほらしき名や小松吹萩すゝき 吹萩:ふくはぎ
 343 芭蕉  心から雪うつくしや西の雲 
 344 芭蕉  ふらぬ日や見たい程見る雪の山 
 345 芭蕉  夜や冰猫の行音蛙音 冰:こおり
 346 芭蕉  やすらかに風のごとくの柳かな 
 347 芭蕉  わせの香や分入右は有磯海 分入:わけいる
 348 曽良  汐越や鶴はぎぬれて海涼し 
 349 芭蕉  嶋じまや千々にくだきて夏の海 
 350 芭蕉  夏山に足駄を拝む首途哉 首途:かどで
 351 芭蕉  暫時は滝に籠るや夏の初 暫時:しばらく 籠る:こもる 夏の初:げのはじめ
 352 芭蕉  あらたうと青葉若葉の日の光 
 353 芭蕉  塩にしてもいざことづてん都鳥 
 354 種田山頭火  沈み行く夜の底へ底へ時雨落つ 
 355 種田山頭火  ぬれてきてほんにしづかな雨 
 356 種田山頭火  けふは街へ下る山は雨 
 357 種田山頭火  霧雨しくしく濡れるもよろしく 
 358 種田山頭火  いちにち雨をあるいて赤い花白い花 
 359 種田山頭火  けふも秋雨で誰かを待ってゐる 
 360 種田山頭火  霧雨のしっとりと松も私も 
 361 種田山頭火  酔ふたが雨の音 
 362 種田山頭火  よごれものは雨があらってくれた 
 363 種田山頭火  雨なれば雨をあゆむ 
 364 種田山頭火  朝の雨青葉も濡れつ私も濡れつ 
 365 種田山頭火  木枯やぼうぼうとしてゐる 
 366 種田山頭火  凩に吹かれつゝ光る星なし 
 367 種田山頭火  さみしさ酒にとろける風のふく 
 368 種田山頭火  しみじみ晴れて風ふく一人 
 369 種田山頭火  風のなか耕してゐる 
 370 種田山頭火  春風の吹くまま咲いて散って行く 
 371 種田山頭火  風の明暗を行く 
 372 種田山頭火  どうでもよい風がふく青葉山 
 373 種田山頭火  晴れて風ふくふかれつつゆく 
 374 種田山頭火  風が枯葉を私もねむれない 
 375 種田山頭火  ふと眼がさめて風ふく 
 376 種田山頭火  竹の葉に風あるひとりである 
 377 種田山頭火  白い花たゞ一りんの朝風のふく 
 378 種田山頭火  風が吹きぬける風鈴と私 
 379 夏目漱石  起きもならぬわが枕辺や菊を待つ 
 380 夏目漱石  仏より痩せて哀れや曼珠沙華 
 381 夏目漱石  別るるや夢一筋の天の川 
 382 夏目漱石  衰に夜寒逼るや雨の音 
 383 種田山頭火  風の枯木をひらふては一人 風の枯木をひらふてはゆく
 384 種田山頭火  まったく春風の中 
 385 種田山頭火  ここのすゞしい風におちつく 
 386 種田山頭火  秋風の水で洗ふ 
 387 種田山頭火  けさの風を入れる 
 388 種田山頭火  人里ちかい松風の道となる 
 389 種田山頭火  風のすゝきのなかにうづもれる 
 390 種田山頭火  つきあたってまがれば風 
 391 種田山頭火  更けると水音が秋 
 392 種田山頭火  ふとおもひでの水音ばかり 
 393 種田山頭火  たゝずめば水音のはてもなし 
 394 種田山頭火  水音の千年万年ながるる 
 395 種田山頭火  歩けるだけ歩く水音の遠く近く 
 396 種田山頭火  水音の青葉のいちにち歩いてきた 
 397 種田山頭火  水音の明るうなる草の芽 
 398 種田山頭火  水音の秋風の石をみがいてゐる 
 399 種田山頭火  水音のしんじつ落ちついてきた 水音のしんじつ落ちつきました
 400 種田山頭火  妻を子をおもふとき水音たかく 
 401 種田山頭火  松虫鈴虫水の音夜もすがらたえず 
 402 種田山頭火  風ふきつのるさびしさの水のむ 
 403 種田山頭火  水のながれの雲のすがたのうつりゆく 
 404 種田山頭火  水底青めば春ちかし 
 405 種田山頭火  水底いちにち光るものありて暮れけり 
 406 種田山頭火  木かげ水かげわたくしのかげ 
 407 種田山頭火  山のよさ水のうまさをからだいっぱい 
 408 種田山頭火  水のまんなかの道がまっすぐ 
 409 山頭火  ここまで来しを水飲んで去る 
 410 山頭火  月のあかるい水をくんでおく 
 411 種田山頭火  いきてゐることがうれしい水をくむ 
 412 種田山頭火  春の水をさかのぼる 
 413 種田山頭火  しょうしょうとふる水をくむ 
 414 種田山頭火  秋の水ひとすぢの道を下る 
 415 種田山頭火  枯草ふかう一すぢの水湧きあがる 
 416 種田山頭火  潮騒の椿ぽとぽと 
 417 種田山頭火  松はおだやかな汐鳴り 
 418 種田山頭火  枕ならべて二人昔の波音 
 419 種田山頭火  うちぬけて秋ふかい山の波音 
 420 種田山頭火  波音の松風の秋の雨かな 
 421 種田山頭火  波音おだやかな夢のふるさと 
 422 種田山頭火  けふも好い日の朝の波音 
 423 種田山頭火  松のみどりの山のむかうの波音 
 424 種田山頭火  波音強くして葱坊主 
 425 種田山頭火  波音のさくらほろほろ 
 426 種田山頭火  波音のお念仏がきこえる 
 427 種田山頭火  遠く近く波音のしぐれてくる 
 428 種田山頭火  波の音しぐれて暗し 
 429 種田山頭火  波音の稲がよう熟れてゐる 
 430 種田山頭火  波の音聞きつゝ遠く別れ来し 
 431 種田山頭火  波の音ばかり波の上に寝ころんで 
 432 種田山頭火  波のうねりを影がおよぐよ 
 433 種田山頭火  月は隈なく波のしぶきに揺る花白し 
 434 種田 山頭火  波が風が濃く碧く漁舟吹き寄せたり 
 435 種田山頭火  波とゞろ雲にひゞきて落ちつかぬ日かな 
 436 種田山頭火  曇れば波立つ行く春の海の憂鬱 
 437 種田山頭火  しぐるる海のふるさとちかく晴れさうな 
 438 種田山頭火  いのちありて海は花曇りのさざなみ 
 439 種田山頭火  まがると風が海ちかい豌豆畑 豌豆畑:えんどうばたけ
 440 種田山頭火  脚のいたさも海は空は日本晴れ 
 441 種田山頭火  湖は濁りてひたひた我に迫りたれ 
 442 河東碧梧桐  画に映る萱草高し窓の外 
 443 河東碧梧桐  炉に籠るあるじの秋を驚かす 
 444 河東碧梧桐  山かけて鳥わたるる湖の眺め哉 
 445 河東碧梧桐  夕桜何がさはって散りはじめ 
 446 蕪村  女倶して内裏拝まんおぼろ月 
 447 子規  吾ヲ見舞フ長十郎ガ誠カナ 
 448 子規  女負ふて川渡りけり朧月 
 449 子規  来年や葵さいてもあはれまじ 来年やあふひ咲いても逢はれまじ
 450 子規  夜寒さや人静りて海の音 
 451 子規  行く春を徐福がたよりなかりけり 
 452 子規  病む人の病む人を訪ふ小春かに 
 453 子規  山吹や何がさはって散りはじめ 
 454 子規  山吹やいくら折っても同じ枝 
 455 子規  厄月の庭に咲いたる牡丹哉 
 456 炭太祇  物がたき老いの化粧や更衣 
 457 芭蕉  先ずたのむ椎の木もあり夏木立 
 458 子規  餅搗にあはす鉄道唱歌かな 
 459 子規  むすびおきて結ぶの神は旅立ちぬ 結びおきて結ぶの神は旅立ちぬ
 460 子規  短夜のわれをみとる人うたゝねす 
 461 子規  松杉や枯野の中の不動堂 
 462 子規  牡丹散る病の床の静かさよ 
 463 子規  先生のお留守寒しや上根岸 
 464 炭太祇  関越えて又柿かぶる袂哉 袂:たもと
 465 一茶  春立つや愚の上に又愚に返る 
 466 子規  灯ともして笙吹く春の社かな 笙:ふえ
 467 子規  春風に吹かれて君は興津まで 
 468 子規  宿惜む宿日本の豆腐汁 
 469 子規  眠らんとす汝静に縄を打て 
 470 子規  日本の春の名残や豆腐汁 
 471 子規  奈良漬ノ秋ヲ忘レヌ誠カナ 
 472 子規  夏やせや牛乳にあきて粥薄し 
 473 子規  ナカナカニ虫喰ヒ栗ノ誠カナ 
 474 子規  筍や目黒の美人ありやなしや 
 475 子規  水飯や弁慶殿の喰ひ残し 
 476 折井愚裁  たそがれのしぐるゝ寺の静か也 
 477 折井愚裁  尋ね来て主なき家の空きの夕 
 478 子規  小松曳袴の泥も画にかゝん 
 479 折井愚裁  川端の淋しくなりぬ九月尽 
 480 虚子  おもかげのかりに野菊と名づけんか 
 481 虚子  姉妹の土筆つむ也馬の尻 姉妹の土筆摘むなり馬の尻
 482 子規  大かたの枯木の中や初さくら 
 483 井上井月  梅からも縄引張で掛菜かな 掛菜:ダイコンの茎や葉を干したもの 干葉:ひば ともいう
 484 折井愚裁  石垣に落葉つもれる社哉 
 485 折井愚裁  荒磯に初日の松の枝寒むし 
 486 井上井月  朝寒や片がり鍋に置く火ばし 
 487 子規  鶏頭に狗の子の眠る日向かな 狗:いぬ
 488 子規  金なくて花見る人の心哉 
 489 子規  蛙鳴蝉噪彼モ一時ト蚯蚓鳴ク 蛙鳴蝉噪:あめいせんそう 無駄な表現が多く、内容の乏しい下手な議論や文章。無用の口論や下手な文章をいう。
 490 子規  いまだ天下を取らず虱と蚊に病みし 
 491 子規  稲の香の嵐になりし夕かな 
 492 子規  無花果ニ手足生エタト御覧ゼヨ  
 493 虚子  朝顔や蕾のそばに実は青し 
 494 子規  朝顔の種を干す日や百舌の声 
 495 子規  蕣の入谷豆腐の根岸哉 蕣:あさがお
 496 子規  秋は山は昼は白壁夜は灯 
 497 河東碧梧桐  桑畑の草かやつりくさも茂り鳬 鳬:けり
 498 河東碧梧桐  朝顔の実や零落の儒者の髭 
 499 河東碧梧桐  朝顔の入谷根岸の笹の雪 
 500 種田山頭火  海は曇って何もない雨 
 501 種田山頭火  朝ぐもり海へ出てゆく暑い雲 
 502 種田山頭火  海をまへに果てもない旅のほこりを払ふ 
 503 種田山頭火  まへにうしろに海が見える草で寝ころぶ 
 504 種田山頭火  行手けふも高い山が立ってゐる 
 505 種田山頭火  山のしたしさは水音をちこち 
 506 種田山頭火  朝の山から煙ひとすぢ 
 507 種田山頭火  山は枯れて犬はほえてゐる 
 508 種田山頭火  これから越えてゆかう山は白雪 
 509 種田山頭火  山は寒い灯をぢいて山 
 510 種田山頭火  枯れた山に日があたりそれだけ 
 511 種田山頭火  道がまっすぐにつきあたる山は初雪 
 512 種田山頭火  山から煙がやすらかな朝空 
 513 種田山頭火  山のすがたのおっとりとして月 
 514 種田山頭火  暮れると寝て明けるよりあるく山また山 
 515 種田山頭火  水に声ある山ふところでねむる 
 516 種田山頭火  山のよさを水のうまさをからだいっぱい 
 517 種田山頭火  山のかげひそかなる水をうごかすものあり 
 518 種田山頭火  山のいろも寒うなった雲かげのうつりゆく 
 519 種田山頭火  山の中から山の実山の泥つけてきた 
 520 種田山頭火  山へのぼって山の枯木をひらうてきた 
 521 種田山頭火  あるくともなくあるいてきて落葉する山 
 522 種田山頭火  一歩づつあらはれてくる朝の山 
 523 種田山頭火  山国の山ふところで昼寝する 
 524 種田山頭火  山のなか山が見えない霧のなか行く 
 525 種田山頭火  ひとり山越えてまた山 
 526 種田山頭火  ひとりあるけば山の水音よろし 
 527 種田山頭火  蕗のとう木曽はおもひでの山よ水よ 
 528 種田山頭火  濡れて涼しく晴れて涼しく山超える 
 529 種田山頭火  星がまたゝく山こえて踊太鼓のすんでくる 
 530 種田山頭火  山のまろさは蜩がなき 
 531 種田山頭火  人にあはない山のてふてふ 
 532 種田山頭火  あの山こえて雷鳴が私もこえる 
 533 種田山頭火  山の鴉はけふも朝からないてゐる 
 534 種田山頭火  雷鳴が追っかけてくる山を越える 
 535 種田山頭火  今から畑へなかなか暮れない山のかなかな 
 536 種田山頭火  裏からすぐ山へ木の芽草の芽 
 537 種田山頭火  春蝉もなきはじめ何でもない山で 
 538 種田山頭火  山へのぼれば山すみれ藪をあるけば藪柑子 藪柑子:やぶこうじ
 539 種田山頭火  山に霧が、寂しがらせる霧が山に 
 540 種田山頭火  山の椿のひらいては落ちる 
 541 種田山頭火  みんな山ゆきすがたの雪が来さうな 
 542 種田山頭火  山から下りてゆく街へ虹立った 
 543 種田山頭火  地下足袋おもたく山の土つけてきてゐる 
 544 種田山頭火  仕事すまして雪をかぶって山の家まで 
 545 種田山頭火  山から花をもらってもどれば草の実も 
 546 種田山頭火  月が落ちる山の鐘鳴りだした 
 547 種田山頭火  山のいちにち蟻もあるいてゐる 
 548 種田山頭火  山の仏には山の花 
 549 種田山頭火  なぐさまないこゝろを山のみどりへはなつ 
 550 種田山頭火  そゝくさ別れて山の青葉へ橋を渡る 
 551 種田山頭火  山の花は山の水に活けてをき 
 552 種田山頭火  山ゆけば水の水すまし 
 553 種田山頭火  山ふところで桐の花 
 554 種田山頭火  明けてくる山の灯の消えてゆく 
 555 種田山頭火  こゝからは筑紫路の枯草山 
 556 種田山頭火  山に向かって久しぶりの大声 
 557 種田山頭火  近づいてゆく山の紅葉の残ってゐる 
 558 種田山頭火  山の鴉のなきかはす間を下る 
 559 種田山頭火  枯草山に夕日がいっぱい 
 560 種田山頭火  枯山のけむり一すじ 
 561 種田山頭火  日が落ちかゝるその山は祖母山 
 562 種田山頭火  山の水のうまさ虫はまだ鳴いてゐる 
 563 種田山頭火  朝の山のしづかにも霧のよそほひ 
 564 種田山頭火  山の水はあふれあふれて 
 565 種田山頭火  日の照れば雪山のいよいよ白し 
 566 種田山頭火  冬の山が鳴る人を待つ日は 
 567 種田山頭火  ぼんやり観てゐる冬山のかさなれるかたち 
 568 種田山頭火  冬山から音させておりる一人二人 
 569 種田山頭火  冬の山からおりてくるまんまるい月 
 570 種田山頭火  冬山へつきあたり焚火してゐる 
 571 種田山頭火  このからだを投げだして冬山 
 572 種田山頭火  冬山をのぼれば遠火事のけむり 
 573 種田山頭火  秋の山の近道の花をつんでもどる 
 574 種田山頭火  秋山へ明けるもまたずのぼる声だ 
 575 種田山頭火  窓をあけると紅葉山啼くはひよどり 
 576 種田山頭火  聳えて秋の山ならんでゐる 
 577 種田山頭火  秋の山ゆきつけばお寺 
 578 種田山頭火  濡れて越える秋山のうつくしさよ 
 579 種田山頭火  秋山のもくもくとして明けはなれるすがた 
 580 種田山頭火  秋山は立たせたまふは石仏 
 581 種田山頭火  秋はいちはやく山の櫨を染め 
 582 種田山頭火  夏山のかさなれば温泉のわくところ 
 583 種田山頭火  煙たなびけば春山らしくも 
 584 種田山頭火  春の山から伐りだして長い長い木 
 585 種田山頭火  春の山鐘撞いて送られた 
 586 種田山頭火  春の山をのぼる何でもない山 
 587 種田山頭火  みちはうねってのぼっていゆく春の山 
 588 種田山頭火  かすかに山が見える春の山 
 589 種田山頭火  右は海へ左は山へ木槿咲いてゐる 木槿:むくげ
 590 種田山頭火  残雪の誰かの足あとが道しるべ 
 591 種田山頭火  道しるべ倒れたまゝの山しぐれ 
 592 種田山頭火  道しるべ立たせたまふは南無地蔵尊 
 593 種田山頭火  道しるべやっと読める花がちるちる 
 594 種田山頭火  道しるべが読めないかげろふもゆる 
 595 種田山頭火  てふてふ峠をおりてきた 
 596 種田山頭火  牛をみちづれにうららかな峠一里 
 597 種田山頭火  長い峠の、萩がちったけ虫がないたり 
 598 種田山頭火  電線はまっすぐにわたしはうねうね峠が長い 
 599 種田山頭火  ひょっこり家が花がある峠まがれば 
 600 種田山頭火  そこは涼しい峠茶屋も馬も知ってゐる 
 601 種田山頭火  ながい豆も峠茶屋のかなかな 
 602 種田山頭火  やまみちのきはまればわいてゐる水 
 603 種田山頭火  山路みち暮れいそぐりんだう 
 604 種田山頭火  山路わからなくなったところ石地蔵尊 
 605 種田山頭火  山路くだりくる母子柿をかぢりつつ 
 606 種田山頭火  山路ふかうして汽車の音高うして 
 607 種田山頭火  山路なつかしくバットのカラも 
 608 種田山頭火  山路たまたまゆきあへばしたしい挨拶 
 609 種田山頭火  山路あるけば山の鴉がきてはなく 
 610 種田山頭火  雪の山路の、もう誰か通った 
 611 種田山頭火  山路暮れのこる水を飲み 
 612 種田山頭火  山路はや萩を咲かせている 
 613 種田山頭火  迷うた山路で真赤なつゝじ 
 614 種田山頭火  朝の山路で何やら咲いてゐる 
 615 種田山頭火  山路咲きつゞく中のをみなへしである 
 616 種田山頭火  どこまでゆく遠山の雪ひかる 
 617 種田山頭火  はてなき旅の遠山の雪ひかる 
 618 種田山頭火  ぢっとしてはゐられない遠山の雪のひかり 
 619 種田山頭火  けふの、わたしの、こゝのお正月で遠山の雪 
 620 種田山頭火  晩めしはよばれにゆく遠山の雪 
 621 種田山頭火  このさみしさや遠山の雪 
 622 種田山頭火  秋はうれしい朝の山々 
 623 種田山頭火  朝の山かさなって秋の山々 
 624 種田山頭火  ぐっすりと寝た朝の山が秋の山々 
 625 種田山頭火  遠く遠く鳥わたる山山の雪 
 626 種田山頭火  遠く山なみの雪ひかれば何となく 
 627 種田山頭火  柚子の香のほのぼの遠い山なみ 
 628 種田山頭火  山なみ遠く信濃の国の山羊がなく 
 629 種田山頭火  とほく山なみのひかるさへ 
 630 種田山頭火  雪ふれば雪を観てゐる私です 
 631 種田山頭火  雪のゆききのさびしくもあるか 
 632 種田山頭火  雪かなしく一人の夜となりけり 
 633 種田山頭火  夕焼ふかく何かを待ってゐる 
 634 種田山頭火  山ゆけば山のとんぼがきてとまり 
 635 種田山頭火  山ほとゝぎす解けないものがある 
 636 種田山頭火  山の色澄みきってまっすぐな煙 
 637 種田山頭火  山あをあをと死んでいく 
 638 種田山頭火  やっと一人となり私が旅人らしく 
 639 種田山頭火  虫の音のふけゆくまゝにどうしようもないからだよこたへて 
 640 種田山頭火  麦の穂のおもひでがないでもない 
 641 種田山頭火  みんな死んでしまうことの水音 
 642 種田山頭火  みんないんでしまった炎天 
 643 種田山頭火  水底うつくしう夕映えて動くものなし 
 644 種田山頭火  松風のゆきたいところへゆく 
 645 種田山頭火  また見ることもない山が遠ざかる 
 646 種田山頭火  またあふまじき弟にわかれ泥濘ありく 泥濘:でいねい ぬかるみ
 647 種田山頭火  菩提樹によりかかりまた月と逢うてゐる 
 648 種田山頭火  ふるさと遠い雨の音がする 
 649 種田山頭火  冬木立人来り人去る 
 650 種田山頭火  降ったり照ったり死場所をさがす 
 651 種田山頭火  陽を吸ふ 
 652 種田山頭火  昼寝さめてどちらを見ても山 
 653 種田山頭火  一すぢの煙悲しや日輪しづむ 
 654 種田山頭火  日が暮れて夜が明けてそして乞ひはじめる 
 655 種田山頭火  はぎがすゝきがけふのみち 
 656 種田山頭火  墓のしゞまを身ひとつに落葉焚く 
 657 種田山頭火  墓が一つこゝでも誰か死んでゐる 
 658 種田山頭火  何だかなつかしうなるくちなしさいて 
 659 種田山頭火  波音たえずして一人 
 660 種田山頭火  菜の花咲いた旅人として 
 661 種田山頭火  なにやらかなしく水のんで去る 
 662 種田山頭火  何もかも過去となってしまった菜の花ざかり 
 663 種田山頭火  泣き得ぬが悲し一葉の散る見ても 
 664 種田山頭火  どうにもならない人間が雨を観る 
 665 種田山頭火  つゆ草のさけばとて雨ふるふるさとは 
 666 種田山頭火  妻と子をおもふとき水音たかく 
 667 種田山頭火  月草よ汝とありて七月を尽きぬ 月草:露草
 668 種田山頭火  月が昇れりわがまへの花ひらくべし 
 669 種田山頭火  月が酒が私ひとりの秋かよ 
 670 種田山頭火  杖よどちらへゆかう芽ぶく山山 
 671 種田山頭火  黙って今日の草履穿く 
 672 種田山頭火  たまさか飲む酒の音さびしかり 
 673 種田山頭火  旅も何となくさびしい花の咲いてゐる 
 674 種田山頭火  旅のかきおきかきかえておく 
 675 種田山頭火  旅寝は風のさみしさのはてなし 
 676 種田山頭火  旅法衣ふきまくる風にまかす 
 677 種田山頭火  焚火よく燃える郷のことおもふ 
 678 種田山頭火  大根二葉わがままな気ままの旅をおもふ 
 679 種田山頭火  それからそれと考へるばかりで月かげかたむいた 
 680 種田山頭火  空に雲なし透かし見る火酒の濃き色よ 
 681 種田山頭火  すわれば風がある秋の雑草 
 682 種田山頭火  すすき穂にでて悲しい日がまたちかづく 
 683 種田山頭火  死んでもよい青葉風ふく 
 684 種田山頭火  しんじつ一人として雨を観るひとり 
 685 種田山頭火  しみじみ濡れて若葉も麦も旅人わたしも 
 686 種田山頭火  志布志へ一里の秋の風ふく 
 687 種田山頭火  死はひややかな空とほく雲のゆく 
 688 種田山頭火  死ねる薬をまへにしてつくつくぼうし 
 689 種田山頭火  死にたくも生きたくもない風が触れてゆく 
 690 種田山頭火  沈みゆく夜の底へ底へ時雨落つ 
 691 種田山頭火  しぐれて人が海を見てゐる 
 692 種田山頭火  潮満つまゝに夕雲のくづれ落ちつきぬ 
 693 種田山頭火  淋しさ堪へがたし街ゆけば街の埃かな 
 694 種田山頭火  さてどちらへ行かう風のふく さてどちらに行かう風のふく 
 695 種田山頭火  雑草よこだはりなく私も生きてゐる 
 696 種田山頭火  さくらちるさくらちるばかり 
 697 種田山頭火  こんやはひとり波音につつまれて 
 698 種田山頭火  乞ふことをやめて山を観る 
 699 種田山頭火  孤独であることが、くしゃみがやたらにでる 
 700 種田山頭火  其中一人いつも一人の草萌ゆる 
 701 種田山頭火  ここを墓場として曼殊沙華燃ゆる 
 702 種田山頭火  ここを死場所として草のしげりにしげり 
 703 種田山頭火  こゝろつかれて山が海がうつくしすぎる 
 704 種田山頭火  こゝに来て山のよろしさをしみじみ味ふ 
 705 種田山頭火  凩のふけてゆく澄んでくる心 
 706 種田山頭火  けふのはじまりの汽笛長う鳴るかな 
 707 種田山頭火  暮れてふきつのる風を聴いてゐる 
 708 種田山頭火  雲はちぎれちぎれて風のみ光る空 
 709 種田山頭火  雲のかゞやき草のかゞやき一人踏むなり 
 710 種田山頭火  句集措いて見る海少し波立てり 
 711 種田山頭火  草の中に寝てゐたのか波の音 
 712 種田山頭火  草に寝ころんで雲なし 
 713 種田山頭火  草にすわりおもひはるかなり 
 714 種田山頭火  ききょうかるかやことしの秋は寝床がある 
 715 種田山頭火  考へるともなく考へてゐたしぐれてゐた 
 716 種田山頭火  鴉ないたとて誰もきてはくれない 
 717 種田山頭火  かへりはひとりの月があるいっぽんみち 
 718 種田山頭火  風をあるいて来てふたたび逢へた 
 719 種田山頭火  風ふく夜のこゝちようコップ砕けたり 
 720 種田山頭火  風は何よりもさみしいとおもふすすきの穂 
 721 種田山頭火  風は初夏の、さっそうとしてあるけ 
 722 種田山頭火  風は五月のさわやかな死にざま 
 723 種田山頭火  風は気まゝに海へ吹く夜半の一人かな 
 724 種田山頭火  風は海から吹きぬける葱坊主 
 725 種田山頭火  風のなか酔うて寝てゐるひとり 
 726 種田山頭火  風のなかおとしたものをさがしてゐる 
 727 種田山頭火  火酒恋し青葉に注ぐ雨も慕はれて 
 728 種田山頭火  笠に蜻蛉をとまらせてあるく 
 729 種田山頭火  かげもいっしょにあるく 
 730 種田山頭火  柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる 
 731 種田山頭火  おひがん花がお彼岸らしく咲いてゐるだけ 
 732 種田山頭火  音もなつかしいながれをわたる 佐波川
 733 種田山頭火  大銀杏しづけさのきはみ散りそめし 
 734 種田山頭火  逢うて菜の花わかれて菜の花ざかり 
 735 種田山頭火  炎天の稗をぬく 
 736 種田山頭火  海見れば暢ぶ思ひ今日も子を連れて 暢ぶ:のぶ
 737 種田山頭火  海は濁りてひたひた我れに迫りたれ 
 738 種田山頭火  いぬころ草もほうけてきたまた旅に出よう 
 739 種田山頭火  いちめんの夏草をふむその点景の私として 
 740 種田山頭火  月草を植ゑて一人 月草:露草の古名
 741 種田山頭火  こゝでやすもう月草ひらいてゐる 月草:露草の古名
 742 種田山頭火  濡れてすゞしくはだしで歩く 
 743 種田山頭火  酔へばはだしで歩けばふるさと 
 744 種田山頭火  ぐいぐいかなしみがこみあげる風のさびしさ 
 745 種田山頭火  私と生まれて秋ふかうなる私 
 746 種田山頭火  更けてひそかなる木の葉のひかり 
 747 種田山頭火  秋ただにふかうなるけふも旅ゆく 
 748 種田山頭火  死ねないでゐるふるつくふうふう ふるつくふうふう:ふくろうの鳴き声
 749 種田山頭火  一日物いはず海にむかへば潮満ちて来ぬ 
 750 種田山頭火  いさかへる夫婦に夜蜘蛛さがりけり 
 751 種田山頭火  生きるも死ぬるもこの月を観よ 
 752 種田山頭火  生きられるだけは生きやう草萌ゆる 
 753 種田山頭火  佐波川の瀬もかはっていた 山頭火の日記より
 754 種田山頭火  こゝにふきのとうひらいてゐる 
 755 種田山頭火  われをしみじみ風が出てきて考へさせる 
 756 種田山頭火  われいまここに海の青さのかぎりなし 
 757 種田山頭火  別れて来た道がまっすぐ 
 758 種田山頭火  わがまゝ気まゝな旅の雨にはぬれてゆく 
 759 種田山頭火  りんだうほのかな風を感ず 
 760 種田山頭火  夜のみち白い一すぢをたどる 
 761 種田山頭火  酔へなくなったみじめさをこうろぎの鳴く 
 762 種田山頭火  行きたい方へ行けるところまで秋風 
 763 種田山頭火  歩きつづける彼岸花さきつづける 
 764 種田山頭火  歩いても歩いても草ばかり 
 765 種田山頭火  あるいて水音のどこまでも 
 766 種田山頭火  あるいてさみしい顔を子供にのぞかれて 
 767 種田山頭火  あふたりわかれたりさみだるる 
 768 種田山頭火  葦の穂風の行きたい方へ行く 明日は明日の風が吹かう、今日は今日の風に任せる
 769 種田山頭火  朝焼おそき旦薔薇は散りそめぬ 
 770 種田山頭火  朝の橋をわたるより乞ひはじめる 
 771 種田山頭火  朝露しっとり行きたい方へ行く 
 772 種田山頭火  秋空ただよふ雲の一人となる 
 773 種田山頭火  秋風また旅人となった 秋風また旅となった 
 774 種田山頭火  秋風の街角の一人となりし 
 775 種田山頭火  秋風けふも乞ひ歩く 
 776 種田山頭火  秋風あるいてもあるいても 
 777 尾崎放哉  一つの湯呑を置いてむせてゐる 
 778 尾崎放哉  窓まで這って来た顔出して青草 
 779 尾崎放哉  咳込む日輪くらむ 
 780 種田山頭火  ぽろぽろ冷飯ぼろぼろ秋寒 
 781 種田山頭火  捨てたをはりのおのれを捨てる水 
 782 種田山頭火  死ねる薬はふところにある日向ぼっこ 
 783 尾崎放哉  ぴったりしめた穴だらけの障子である 
 784 尾崎放哉  心をまとめる鉛筆とがらす 
 785 尾崎放哉  水を飲んで尿しに出る雑草 
 786 尾崎放哉  爪切ったゆびが十本ある 
 787 尾崎放哉  わが顔があった小さい鏡買うてもどる 
 788 種田山頭火  旅もなぐさまないこゝろ持ちあるく 
 789 種田山頭火  水のんで尿して去る 
 790 種田山頭火  いやな夢見た朝の爪をきる 
 791 種田山頭火  それは私の顔だった鏡つめたく 
 792 尾崎放哉  柘榴が口あけたたはけた恋だ 
 793 尾崎放哉  わかれを云ひて幌おろす白いゆびさき 
 794 尾崎放哉  酔のさめかけの星が出てゐる 
 795 尾崎放哉  酒もうる煙草もうる店となじみになった 
 796 種田山頭火  ゆふべはやりきれない木蓮のしろさ 
 797 種田山頭火  その手が、をんなになってゐる肉体 
 798 種田山頭火  ああいへばかうなる朝がきて別れる 
 799 種田山頭火  酔へばへいろいろの声が聞こえる冬雨 
 800 種田山頭火  よい宿でどちらも山で前は酒屋で 
 801 尾崎放哉  にくい顔思ひ出し石ころをける 
 802 尾崎放哉  昼寝の足のうらが見えてゐる訪ふ 訪:おとな
 803 尾崎放哉  友を送りて雨風に追はれてもどる 
 804 尾崎放哉  笑へば泣くやうに見える顔よりほかなかった 
 805 尾崎放哉  人をそしる心をすて豆の皮むく 
 806 種田山頭火  冬ぐもり、いやな手紙をだしてきたぬかるみ 
 807 種田山頭火  すげなくかへしたが、うしろすがたが、春の雪ふる 
 808 種田山頭火  ぬくめしに雲丹をぬり向きあってゐる 
 809 種田山頭火  うちのやうなよそのやうなお盆の月夜 
 810 種田山頭火  水仙いちりんのお正月です 
 811 種田山頭火  お墓したしさの雨となった 
 812 種田山頭火  鴉けふも啼きさわぎ雲のみだれけり 
 813 種田山頭火  番茶濃きにもおばあさんのおもかげ 
 814 種田山頭火  大きな鳥の羽ばたきに月は落ちんとす 
 815 種田山頭火  ほんにうまい水がある注連張ってある 
 816 種田山頭火  うつりきてお彼岸花の花ざかり 
 817 種田山頭火  ぽろぽろしたたる汗がましろな函に 
 818 尾崎放哉  犬をかかへたわが肌には毛が無い 
 819 尾崎放哉  朝霧豚が出て来る人が出て来る 
 820 尾崎放哉  迷って来たまんまの犬で居る 
 821 尾崎放哉  鳥がだまってとんで行った 
 822 種田山頭火  蜘蛛は網張る私は私を肯定する 
 823 種田山頭火  春風の豚でうめく 
 824 種田山頭火  むしあつく生きものが生きものの中に 
 825 尾崎放哉  一日雪ふるとなりをもつ 
 826 尾崎放哉  風吹きくたびれて居る青草 
 827 尾崎放哉  雨の日は御灯ともし一人居る 
 828 尾崎放哉  雨のあくる日の柔らかな草をひいて居る 
 829 尾崎放哉  小さい時の自分が居った写真を突き出される 
 830 尾崎放哉  故郷の冬空にもどって来た 
 831 尾崎放哉  淋しい寝る本がない 
 832 種田山頭火  秋日あついふるさとは通りぬけよう 
 833 種田山頭火  寝るところが見つからないふるさとの空 
 834 種田山頭火  焼かれて死ぬる虫のにほひのかんばしく 
 835 種田山頭火  ぶすりと音たてて虫は焼け死んだ 
 836 種田山頭火  春がそこまで窓のさくら草 
 837 種田山頭火  ひとりで酔へば啼くは鴉よ 
 838 種田山頭火  春が来たわたしのくりやゆたかにも 
 839 種田山頭火  身のまわりかたずけて山なみの雪 
 840 種田山頭火  道がなくなり落葉しようとしてゐる 
 841 種田山頭火  べうべううちよせてわれをうつ 
 842 種田山頭火  その松の木のゆふ風ふきだした 
 843 種田山頭火  秋空の墓をさがしてあるく 
 844 種田山頭火   旅もいつしかおたまじゃくしが鳴いてゐる 
 845 種田山頭火  山すそあたゝかなこゝにうづめます 
 846 種田山頭火  飛んでいっぴき赤蛙 
 847 種田山頭火  ごろりと草にふんどしかわいた 
 848 種田山頭火  雪ふるたべるものはあって雪ふる 
 849 種田山頭火  ふたゝびはふむまい土をふみしめて征く 
 850 種田山頭火  草は咲くがまゝのてふてふ 
 851 種田山頭火  死のすがたのまざまざ見えて天の川 
 852 種田山頭火  草のそよげばなんとなく人を待つ 
 853 種田山頭火  かげもはっきりと若葉 
 854 種田山頭火  春がきた水音のそれからそれへあるく 
 855 種田山頭火  これから旅も春風の行けるところまで 
 856 芭蕉  蝶の飛ぶばかり野中の日影かな 
 857 種田山頭火  ま昼の花の一つで蝶々も一つで 
 858 種田山頭火  しろい蝶くろい蝶あかい蝶々もとぶところ 
 859 種田山頭火  ひろがってあんたのこゝろ 
 860 種田山頭火  へちまぶらりと地べたへとゞいた 
 861 種田山頭火  ながい毛がしらが 
 862 種田山頭火  お正月のからすかあかあ 
 863 種田山頭火  其中雪ふる一人として火を焚く 
 864 種田山頭火  今夜の寝床を求むべくぬかるみ 
 865 種田山頭火  さうろうとして水をさがすや蜩に 
 866 種田山頭火  蓑虫も涼しい風に吹かれをり 
 867 種田山頭火  朝は涼しい草履踏みしめて 
 868 種田山頭火  見あぐればまうへ飛行機の空 
 869 種田山頭火  秋空、一点の飛行機をゑがく 
 870 尾崎放哉  海のあけくれのなんにもない部屋 
 871 尾崎放哉  何もかも死に尽したる野面にて我が足音 
 872 尾崎放哉  ここ迄来てしまって急な手紙書いてゐる 
 873 尾崎放哉  月夜戻り来て長い手紙を書き出す 
 874 種田山頭火  この道うたがはしく百舌鳥のするどく 
 875 種田山頭火  なんぼう考へてもおんなじことの落葉ふみあるく なんぼう考へてもおんなじことの落葉をあるく
 876 種田山頭火  われとわれに声かけてまた歩き出す 
 877 尾崎放哉  壁の新聞の女はいつも泣いて居る 
 878 尾崎放哉  時計が動いて居る寺の荒れてゐる 
 879 尾崎放哉  きちんと座って居る朝の竹四五本ある 
 880 尾崎放哉  流れに沿うて歩いてとまる 
 881 尾崎放哉  山吹の花咲き尋ねて居る 
 882 尾崎放哉  何か求むる心海へ放つ 
 883 尾崎放哉  一日物云はず蝶の影さす 
 884 種田山頭火  壁をまともに何考へてゐた 
 885 尾崎放哉  とはに隔つ棺の釘を打ち終へたり 
 886 種田山頭火  悲しみ澄みて煙まっすぐに昇る 
 887 種田山頭火  指示す山々夕映へり青き踏む子等に 
 888 種田山頭火  夕焼けふかぶか追へども去らぬ黒き鳥かな 
 889 種田山頭火  病む児いだけば夜はしんしんとして恋猫も鳴かず 
 890 種田山頭火  焼いてしまへばこれだけの灰を風吹く 
 891 種田山頭火  飯のあたゝかさ手より手へわたされたり 
 892 種田山頭火  味噌汁のにほひおだやかに覚めて子とふたり 
 893 種田山頭火  水はれいろう泳ぎ児のちんぽならびたり 
 894 種田山頭火  水は澄みわたるいもりいもりをいだき 
 895 種田山頭火  水音がねむらせないおもひでがそれからそれへ 
 896 種田山頭火  松風に明け暮れの鐘ついて 
 897 種田山頭火  ほろほろ酔うて木の葉ふる 
 898 種田山頭火  ボタ山へ月見草咲きつづき 
 899 種田山頭火  ほそきみち寒うつゞきて浪の音かな 
 900 種田山頭火  星空の冬木ひそかにならびゐし 
 901 種田山頭火  ふるさと恋しいぬかるみをあるく 
 902 種田山頭火  筆堅に栗飯とあり遠く来し 
 903 種田山頭火  ビルとビルのすきまから見えて山の青さよ 
 904 種田山頭火  びっしょり濡れて代掻く馬は叱られてばかり 
 905 種田山頭火  久しぶりに掃く垣根の花が咲いている 
 906 種田山頭火  春蝉が鳴きかわして水の音かな 
 907 種田山頭火  拂へるだけ拂うてかへる山の青さは 
 908 種田山頭火  畑中の小家は濃き煙吐きつゝ夕闇に包まれぬ 
 909 種田山頭火  ハジカレたが菊の見事さよ 
 910 種田山頭火  蠅も移ってきてゐる 
 911 種田山頭火  昇る日さんらん死人にふりそゝぐかな 
 912 種田山頭火  日記焼き捨てる火であたゝまる 
 913 種田山頭火  投げられし此の一銭春寒し 
 914 種田山頭火  長い毛がしらが 
 915 種田山頭火  友にきくセメント岩や枯芒 
 916 種田山頭火  吶辯の寒山詩や梨むいで 
 917 種田山頭火  毒ありて活く生命にゃ河豚汁 
 918 種田山頭火  電車終点ほっかりとした月ありし 
 919 種田山頭火  鐵鉢の中へも霰 鉄鉢の中へも霰 
 920 種田山頭火  つめたう覚めてまぶしくも山は雑木紅葉 
 921 種田山頭火  土掘る人の汗はつきずよ掘らるゝ土に 
 922 種田山頭火  月のわらやのしづくする新年がきた 
 923 種田山頭火  追放す邪宗徒もありて夜長船 
 924 種田山頭火  地つき唄ほがらかな朝の群集なり 
 925 種田山頭火  炭坑街大きな雪が降りだした 
 926 種田山頭火  食べて寝て月がさしいる岩穴 
 927 種田山頭火  旅はさみしい新聞の匂ひかいでも 
 928 種田山頭火  凧を空に草むしりをる静心 
 929 種田山頭火  銭がない物がない歯がないひとり 
 930 種田山頭火  澄太おもへば柿の葉のおちるおちる 澄太:日本の宗教家、俳人の大山澄太(すみた)で山頭火の紹介者
 931 種田山頭火  捨榾を這ふ霞や山居梅雨晴れて 捨榾:しゃこつ
 932 種田山頭火  死人とりまく人々に雲もなき空や 
 933 種田山頭火  死人そのまゝに砂のかゞやき南無阿弥陀仏 
 934 種田山頭火  しずけさは死ぬるばかりの水がながれて 
 935 種田山頭火  さくらさくらさくさくらちるさくら 
 936 種田山頭火  酒樽洗ふ夕明り鵙がけたゝまし 
 937 種田山頭火  これからまた峠路となるほとゝぎす 
 938 種田山頭火  こばまれて去る石ころみちの暑いこと 
 939 種田山頭火  木の葉散り来る歩きつめる 
 940 種田山頭火  孤独讃ず偏狭を夜長星晴れて 
 941 種田山頭火  骨となってかへったかサクラさく 
 942 種田山頭火  ここにわたしがつくつくぼうしがいちにち 
 943 種田山頭火  こゝにおちつき山ほとゝぎす 
 944 種田山頭火  風に吹かれつゝ光る星なりし 
 945 種田山頭火  けふは霰にたたかれて 
 946 種田山頭火  草の日向の蛇がかくれる穴はあった 
 947 種田山頭火  霧島にみとれてゐれば赤とんぼ 
 948 種田山頭火  煙管たゝくに淋しき音と火鉢撫づ 
 949 種田山頭火  涸れきった川を渡る 
 950 種田山頭火  鶏啼いて私も一人 
 951 種田山頭火  カフェーにデカダンを論ずなつの蝶とべり デカダン:19世紀末、フランスを中心とした文芸上の一傾向。虚無的、退廃的、病的な唯美性を特色とする。 虚無的、退廃的な風潮や生活態度。
 952 種田山頭火  かなしき事のつゞきて草が萌えそめし 
 953 種田山頭火  お寺の竹の子竹となった 
 954 種田山頭火  おたたも或る日は来てくれる山の秋ふかく 
 955 種田山頭火  炎天だまって土掘っている 
 956 種田山頭火  生き残ったからだ掻いてゐる 
 957 種田山頭火  家を出づれば冬樹しんしんとならびたり 
 958 種田山頭火  あんまり早う焼き捨てる日記の灰となった 
 959 荻原井泉水  柿一つ空へあづけてあったとってくる 
 960 荻原井泉水  藪もある、大根の青い隣もある 
 961 荻原井泉水  笠は掛けるところにかかり茶の花 
 962 荻原井泉水  これで茶は足りるといふ茶の木 
 963 荻原井泉水  なるほど其中庵の茶の花で咲いてゐる 
 964 荻原井泉水  何もかもうれしくて柚釜のこげすぎてゐる 
 965 荻原井泉水  裏から茸とって来て日のさしてゐる畳 
 966 種田山頭火  夜の長さ夜どほし犬にほえられて 
 967 種田山頭火  夜露しっとりねむってゐた 
 968 井上井月  何処やらに鶴の聲聞く霞かな 井月:せいげつ
 969 井上井月  降とまで人には見せて花曇 
 970 井上井月  落栗の座を定めるや窪溜まり 
 971 井上井月  駒ケ根に日和定めて稲の花 
 972 井上井月  旅人の我も数なり花ざかり 
 973 井上井月  酒さめて千鳥のまこときく夜かな 
 974 井上井月  酔醒や夜明けに近き雁の聲 
 975 井上井月  寝て起て又のむ酒や花心 
 976 井上井月  露の音腹もへるかに夜の冴 
 977 井上井月  飛ぶぶ星に眼のかよひけり天の川 
 978 井上井月  朝寒や豆腐の外に何もなし 
 979 種田山頭火  水音けふもひとり旅行く 
 980 種田山頭火  これが最後の日本の御飯を食べてゐる、汗 
 981 種田山頭火  秋もいよいよふかうなる日の丸へんぽん 
 982 種田山頭火  大空澄みわたる日の丸あかるい涙あふるる 
 983 種田山頭火  水音とほくちかくおのれをあゆます 
 984 種田山頭火  あらなみをまへになじんでゐた仏 
 985 種田山頭火  すぐそこでしなのゝくにのかっこう 
 986 種田山頭火  花ぐもりの富士が見えたりかくれたり 
 987 種田山頭火  ビルからビルへ東京は私はうごく 
 988 種田山頭火  鎌倉は松の木のよい月がのぼった 
 989 種田山頭火  死がせまってくる炎天 
 990 種田山頭火  たまたま逢うてなんにもないけどちしゃなます 
 991 種田山頭火  庵はこのまゝ萌えだした草にまかさう 
 992 種田山頭火  こゝろすなほに御飯がふいた 
 993 種田山頭火  雪ふるひとりひとりゆく 
 994 種田山頭火  雪の夜は酒はおだやかに身ぬちをめぐり 
 995 種田山頭火  雪ふる其中一人として火を燃やす 
 996 種田山頭火  もう冬がきてゐる木ぎれ竹ぎれ 
 997 種田山頭火  雨の蛙のみんなとんでゐる 
 998 種田山頭火  どうしてもねむれない夜の爪をきる 
 999 種田山頭火  わいてあふれるなかにねてゐる 
 1000 種田山頭火  さみしいからだをずんぶり浸けた 
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